瑞慶覧 宏至|豆腐屋

数千万円の負債と劣悪な労働環境。

豆腐屋を継いだのはいいんですが、父が代表をやっていた頃から経理がどんぶり勘定でした。しかも、父は商売が少し起動に乗った時に現場に出るのをやめて、急に船を買って漁師になったんです。物心ついた時から家にいなくて、1週間に1度帰ってきた時ですらあまり話さないような仲でしたね。その後、兄貴が代表になったんですが、そんな状況で継いだもんだからまとめきれなくて……。プレッシャーで鬱気味になって、1週間に1度豆腐屋の仕事をするかしないかくらいだったみたいです。そういうほとんど経営ができていない会社だったので、蓋を開けてみたら負債が数千万円ありました。だから、最初に継いだばかりの時はめちゃめちゃきつかったですね。一年半休みなしでがむしゃらに働きましたし、部長や工場長、従業員とも喧嘩して辞める辞めない問題が出たり、時には殴られたり。僕なんか完全に厄介者扱いでしたよ。当時は、労働基準監督署が入るほど労働環境も悪かったですし。

どうにかしないといけないと思い、まず最初に県外の豆腐屋さんに勉強へ行きました。おかげで、全国の元気な豆腐屋さんと繋がることができました。事情を聞くと、うちと似たような悪い環境のところも多くて。その原因が売り方だということに気がつきました。豆腐は薄利多売の世界なので、大きい会社は設備投資をして機械を入れて作っていますし、小さいお店は自分の作りたいものを作りたい値段で売っている。我々のような中堅はスーパーへの卸で営利を得ていたのですが、大手に値段では勝てない上に、小さいお店のように個性があるわけでもない。しかも、スーパーのバイヤーさんを納得させなければ売り上げが立たないので、県外の同業者の中にはバイヤーさんの一声で潰れてしまうような会社も少なくはないんです。そう考えた時に、いつまでも卸に頼っていたら会社が継続していかない。商品に個性を出して、直接お客さんに売る方へシフトした方が将来性があるということに気づいたんです。