熊谷 拓明|ダンサー

「熊谷」から、「熊谷カンパニー」へ

熊谷:帰国してから、日本で「踊る『熊谷拓明』カンパニー」として動き出しました。はじめはチケットが売れなくて。自主公演をやっている人たちの社会の中にはセオリーがすごくあるんですよ。有名な俳優さんを入れてチケット完売を目指すとか、雑誌に取り上げてもらうために売り込みをするとか、そういうルールがたくさん転がってたんです。でも僕は2年半日本にいないっていうブランクがあったから、その社会にうまく溶け込めなくて……。

自分のひとり語りを、雑誌の取材に見せかけてサイトに載せたりもして。でもそれが楽しかったんです。どうすれば自分がやってることを面白いと思ってもらえるんだろう、ってひたすら考えて。自分の作品を世の中にうまくフィットさせる方法が必ずある、って思っていたので。そういうことを考えていると、作品の中で自分が何を表現したいのかも、わかってくるんですよ。だから、セオリーを無視して自分で考えてみてよかったなって思います(笑)。決まりごとなんて無視するためにあるんです。

ー 今は好きなことを楽しくやれてるっていう感覚がありますか?

熊谷:うん。例えば次回公演では、誰からも頼まれてないけどひとりで10日間公演をやりますよ。毎回新しいなにかを付け足していけたら楽しいなって思ってます。自分がやりたいことの核さえしっかりしていれば、楽しそうっていう理由でなにかを決めてもいいかなって。

ー そこがブレないから良いモノが作れるんですね。熊谷さんが一番喜びを感じるのって、どういう瞬間ですか?

熊谷:自分がやったことの飛距離が伸びてるって感じたとき。思いがけない人が自分を知ってくれてたときに、自分を信じてやっていいんだって思えます。僕は舞台で“作り話だけど嘘じゃないもの”を見せたいなって思っているので、「今回の作品、今の自分にしっくりきました!」って言ってくれる方がいると、嬉しいですね。落ち込んでいる人には、どんな作品も嘘くさく見えてしまうかもしれないけど、そういう人にも「あ、この作品いいな」って思ってもらえたらすごく嬉しい。作品のなかで色んな感情を照れずに表現して、舞台を面白くしていきたいなと思ってます!